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インタビュー

2022.12.25 Sun

# 探究学習

さかなクンに憧れて昆虫ハンターに。虫採りも人生も目標に一直線

さかなクンに憧れて昆虫ハンターに。虫採りも人生も目標に一直線

東京大学大学院で昆虫の研究をしながら、“昆虫ハンター”として多くのメディアで活躍中のしゅう先生こと牧田習先生。インタビュー前編では、子ども時代のエピソードや大学院での研究、昆虫ハンターの誕生秘話についてお伺いしました。

聞き手:キッズウィークエンド株式会社 代表取締役 三浦 里江


牧田 習先生
昆虫ハンター。1996年、兵庫県生まれ。オスカープロモーション所属。2015年、北海道大学総合教育部入学後、理学部に転部。現在は東京大学大学院(博士課程)に在学中。昆虫ハンターとして、NHK『ダーウィンが来た!』の「ヘラクレスオオカブト 謎の大集結!」の回(2021年1月31日放映)に出演。現在は、『NHK高校講座 歴史総合』(Eテレ)隔週水曜日10:00-10:20に出演のほか、『猫のひたいほどワイド』(テレビ神奈川)水曜レギュラー出演中

“謎多き昆虫の世界”にのめり込んだ子ども時代

──しゅう先生が昆虫に興味を持ったきっかけを教えていただけますか。

最初のきっかけは3歳のとき、祖父がたまたま持ってきてくれたミヤマクワガタが動いている姿を見たことでした。ミヤマクワガタは日本のクワガタの中ではかなり大型で形がわかりやすく、歩き方も特徴的です。ミヤマクワガタが家の壁や床をぎこちなく歩く姿を見て、「なんでこんな形をしているんだろう」「なんで動くんだろう」と思ったことを覚えています。

幼稚園の頃は、昆虫はもちろん自然が好きで、家の近くの原っぱや水たまりで生き物を探していました。僕が昆虫を見つけると、母や祖母が近所の図書館で昆虫図鑑を借りてきてくれて。昆虫図鑑や、幼稚園に置いてある昆虫関連の本を読むことが楽しかったですね。

虫採りは春から秋にかけてのイメージがあるかもしれませんが、小学生時代は冬にも山へ行って、カミキリムシやタマムシの卵が産み付けられた木の枝をたくさん集めていました。集めた木の枝を衣裳ケースに詰めて、暖房の近くに置いておくと、季節を勘違いして孵化(うか)します。僕がお勧めする冬の虫採りです。

しゅう先生お気に入りの昆虫のひとつ「ルリボシカミキリ」

突然昆虫に対する興味が加速したのは、小学6年生の終わりから中学1年生の頃。頭に電流が走ったかのように、毎日虫採りをしていました。もともと好きだったクワガタやチョウ、トンボなど目に付きやすい昆虫以外の、普段目に付かないような小さな昆虫にまで興味の対象が広がるようになったのです。

一時期は切手集めにはまったこともあったのですが、切手のような人間が作ったものには未知の部分が少ないと感じました。一方、昆虫に関しては、わからないことや謎が多くて魅力的でした。


──謎を解くことがお好きだったんでしょうか。


そうですね。今でも昆虫に対してワクワクしていられるのは、謎が解明されていないことがたくさんあるから。昆虫の知識が全部で100だとすると、幼少期の頃に知っていたことが0.01、今でも0.1ぐらいなんです。僕は幼稚園の頃から、「なんで?」とか「不思議だな」と思ったことを、周りの大人に投げかける子どもでした。僕が質問すると、家族が本など答えがわかるものを用意してくれて、一緒に考えてくれる。そのおかげで、「謎を解くことが楽しい」という気持ちを持ち続けることができました。子どもが抱いた疑問に対して、周りの大人が軽く流してしまうと、子どものワクワクする気持ちや謎を解きたいという気持ちが育たなくなるような気がしています。とことん向きあってくれた家族に感謝しかありません。


小学校低学年頃のしゅう先生

虫採りを社会に役立つ研究としてアウトプットしたい

──しゅう先生は現在、大学院でどのような研究をしているのですか?

「昆虫と地球の関係性」が研究のテーマです。地球の環境の変化に伴って、どの種類の昆虫が増えたり減ったりするのかということを調べています。

──具体的には、どのように研究を進めているのでしょうか。

朝起きて晴れていたら、虫を採りに行きます。僕の場合は、基本的に「虫採りをしたい」というマインドが根底にあるんです。ただ、虫採りをしているだけだと研究としては成立しないので、虫の増減に関するデータを蓄積しています。

僕は「何かになりたい」「何かをしたい」というよりも、虫採りが楽しくて研究を続けているタイプ。そういう意味では、小学生の頃からやっていることは変わっていません(笑)。その大好きな虫採りを、社会に役立つ研究としてアウトプットしていくことが、大学院の研究者としての役割だと考えています。


東京大学赤門前にて

未知のワクワクが待っていた! 昆虫ハンターとしての活動

──昆虫ハンターとして活動するようになったきっかけを教えて下さい。

シェアハウスで暮らしていた大学3年生の頃、たまたまついていたテレビで「さかなクン」を見かけたことです。僕はそれまであまりテレビを見たことがなかったので、芸能人を全然知らなくて。でも、さかなクンがとても楽しそうに魚のことを伝えている様子に好感を持ちました。

研究者が生計が立てられるようになるのは、一般的に30~40歳以降という厳しい現実があります。そんな中で、さかなクンがメディアで専門家として活躍されているのを見て、「僕もこうなりたい」と思うようになったのです。

僕は1匹の昆虫を捕まえるために、5年から10年かけることもありました。「ここまで行くぞ」と目標を定めたら、諦めずにそこまで行き着く自信があります。その自信を根拠に芸能事務所の門をたたき、昆虫ハンターとして活動することに成功しました。



──昆虫ハンターになって良かったことは、どんなことですか?

芸能界に身を置いてメディアに出ることで、個人ではできないような体験ができていますし、多くの人に昆虫のことを共有できる喜びも得ました。昆虫のこと以外でも、経験したことがないことに挑戦できるワクワクがあります。

また、テレビに出演した際、「コミュニケーションの達人」といわれる方々の話術の巧みさに驚きました。僕は昆虫の話であっても、「もっと上手く伝えられれば」と思うことがあるのですが、コミュニケーションの達人の方々は、僕が「これはいまいちだ」と思っていた話も面白くしてくださっています。

──先日『踊る!さんま御殿!!』に出演されていましたよね。周りの反応はいかがでしたか。

仕事先ではたくさん「拝見しました」と声をかけられましたが、プライベートでは、高校時代の友達に「見たよ」と言われたぐらいです。両親は僕が出演したことをとても喜んでいて、「人生何があるかわからないね」と言われました。テレビからかけ離れた幼少期を送ってきた僕が、人気のテレビ番組に出演できるなんて、本当に「人生何があるかわからないな」と思っています。

~インタビュー後編<愛してやまない昆虫の魅力を、広く伝えることが僕の使命>に続く~

▶しゅう先生の最新授業「めざせ昆虫ハンター☆昆虫たちの「冬越し」のヒミツに迫る!」<1月29日(日)9:30-10:30、参加費:無料>