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キッズウィークエンド

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インタビュー

2022.10.03 Mon

# 探究学習

一発必中は求めない。「失敗を怖れずに経験を積める場」が大事

一発必中は求めない。「失敗を怖れずに経験を積める場」が大事

宇宙・天文・星空を楽しく学べる「オンラインプラネタリウム」の授業が子どもたちに人気の荒井大作先生。インタビュー後編では、キッズウィークエンドの授業の印象やオンライン授業のメリット、今後の取り組みや展望をお伺いしました。

聞き手:キッズウィークエンド株式会社 代表取締役 三浦 里江


荒井 大作先生
株式会社アストロコネクト代表取締役・フォトマスター1級・星空案内人(星のソムリエ®)。東京工芸大学大学院修士課程修了(光工学専攻)。大学・大学院を通して、レンズ設計を学び、光学メーカーにてデジタルカメラのレンズ設計や新規事業を担当する。2019年より「宇宙と人をつなぎ感動を呼び起こす」ことを目指して起業。リアル・オンライン問わず、特に子どもたちが何かを知る機会を生みだすことに注力している

オンライン授業は、自発的な気付きや出会いが得られる場


──キッズウィークエンドをはじめ、オンライン授業の印象はいかがでしょうか。

キッズウィークエンドの授業には、毎回大勢の子どもたちが参加してくださっています。みなさん元気がよく積極的なので、いつも感謝しています。

以前、キッズウィークエンドとは別の講座でこんなことがありました。4回連続でオンライン講座を行った最終日に、年長さんくらいの男の子が「今日で最後だ」と大泣きして、講座が終わることを悲しんでくださったんです。

オンラインで発信したことに対してリアクションがあるということは、参加者に何かを届けることができたということだと思っています。キッズウィークエンドの授業でも、「何かを届けることができた」という実感を毎回得られています。

──オンライン授業のメリットについては、どのようにお考えですか。

オンラインならではのメリットだと感じることは2つあります。

1つ目は、どこに住んでいても参加できることです。リアルでは、海外から毎週参加することはなかなかできないですよね。海外から参加される方は、表示名のところに「@ドイツ」「@上海」と書いてくださるので、日本の子どもたちにも海外の参加者がいることが明確に分かります。つまり「オンラインなら、興味を持っている人たちが世界中から集まれるんだ」ということを、子どもたちが自発的に理解できるんです。

2つ目は、出会いの幅が広がることです。以前、望遠鏡のキットを事前に受け取り、オンラインで習いながら自身で望遠鏡を組み立てる「オンライン合宿」を開催。その後、自分で作った望遠鏡で木星を見て話し合うという企画でした。

そのときも多方面から参加してくださったんですが、他の子どもたちが「木星が見えた」と歓声を挙げている中で、1人のお嬢さんが「私の住んでいる地域は雨です」とおっしゃったんです。でも彼女は、他の子どもたちに対して笑顔で拍手してくれたんですね。

おそらくとても寂しい思いをされていたはずなのに、相手に対して拍手を送れる、すばらしい心の持ち主がいる。しかも、同世代の友だちにそんな人がいるんだと知ることができる。彼女のような子どもに、他の子どもたちが出会えるということに、オンラインで授業をする大きな意味があると思います。

──すてきなエピソードです。では、オンラインで授業をするにあたって工夫していることはありますか?

私はリアルでもオンラインでも、話し方や授業内容に差はないんです。ただ、どちらであっても「質問することや発言することを恥ずかしがったり遠慮したりしなくていいよ」ということを常々伝えています。

自分で調べても分からないときに「聞きに来るな」と怒られたら、怖くてそれ以上質問できないですよね。自分で調べれば、確かに調べた結果は出てきます。でもその結果がいいか悪いかというジャッジは、一緒にいる大人でないと難しい。ジャッジをしてくれる人がいなければ、子どもはどうすればいいか分からなくなってしまいます。なので、リアルでもオンラインでも、人に対して何か聞くことを良しと思える雰囲気作りを意識しています。

失敗しても、いろんな経験を積んでほしい


──キッズウィークエンドで今後取り組んでいきたいことがあれば教えてください。

今、日本の大人の社会では、一発必中、必ず成功することを求められる傾向にあります。私は嫌なのですが、今の日本社会では、この傾向が強まっています。そして悲しいことに、これからもまだ少し残ると思うんです。

人がやりたいことをしながら生きていく上で何が大切か。それは、成功するしない関係なく、さまざまな経験を積んでいることです。経験を積むと、一発必中は夢物語だと分かるし、何かをするためには経験の数々が必要だということも理解できるのです。

だから、大人のみなさんには「子どものうちは失敗が許される」ことを受け入れてほしいですね。部活や勉強で失敗しても、次に頑張ればいいだけの話。子どものうちは、興味のあることをどんどん試すべきです。キッズウィークエンドの授業でも、子どもたちがやってみたいことを試せる場を提供したいと思っています。

──エジソンも99回失敗して、100回目で初めて成功しました。

そうなんです。今の日本の社会は、その「失敗を繰り返す過程」がすっぽ抜けてしまっている感じがします。「失敗しても、間違ったことを言っても大丈夫だよ」ということを、まず大人が子どもに伝えないといけません。そもそも宇宙のことは、ほとんど答えがない状態です。宇宙のような答えの定まっていないテーマで、経験を積んでいけたらいいですね。

子どもたちが自由に発言できる場を届け続けたい


──最後に、荒井先生が思い描く今後の展望があれば教えてください。

私が子どもたちにお話しできることは、宇宙や星空のことだけですが、宇宙はまだ分からないことだらけです。ざっくりですが、100のうち5ぐらいしか分かっていません。残りの95については、何が分からないかすら分かっていないぐらい。

だからこそ、アマチュアや専門家、大人や子どもなど垣根を越えて話をすべきだと思います。みなさんが同じ場所で同じ目線で同じ空を見て、「あれなんだろう」「こんなことできないかな?」と気兼ねなく話せることが大切。これからも、そんな経験の場となる授業を届け続けていきたいと思います。


2021年に荒井先生が奈良県川上村で撮影した、オリオン座にある「オリオン大星雲」。空気が澄んでいるので、小さな天体望遠鏡でもこんなに星が映ります

~インタビュー前編<10年後「宇宙に関わる仕事」をしたい人に、今知ってほしいこと>はこちら

▶荒井先生の最新授業「オンラインプラネタリウム☆再び人類が訪れる月と月面開発」<10月8日(土)17:00-18:00、参加費:無料>の詳細・申し込みはこちら