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キッズウィークエンド

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インタビュー

2022.09.25 Sun

# 探究学習

10年後「宇宙に関わる仕事」をしたい人に、今知ってほしいこと

10年後「宇宙に関わる仕事」をしたい人に、今知ってほしいこと

キッズウィークエンドでオンラインプラネタリウムを通し、子どもたちに星空や宇宙についての授業をしてくださっている荒井大作先生。インタビュー前編では、幼年期のことや宇宙に興味を持ったきっかけ、これから宇宙に関する仕事に就きたい人が何をすればいいかを伺いました。

聞き手:キッズウィークエンド株式会社 代表取締役 三浦 里江


荒井 大作先生
株式会社アストロコネクト代表取締役・フォトマスター1級・星空案内人(星のソムリエ®)。東京工芸大学大学院修士課程修了(光工学専攻)。大学・大学院を通して、レンズ設計を学び、光学メーカーにてデジタルカメラのレンズ設計や新規事業を担当する。2019年より「宇宙と人をつなぎ感動を呼び起こす」ことを目指して起業。リアル・オンライン問わず、特に子どもたちが何かを知る機会を生みだすことに注力している

ものづくりが好きで考古学者に憧れていた小学生時代


──荒井先生はどんなタイプのお子さんでしたか。


外で遊ぶより、家でプラモデルやブロックを組み立てることが好きな子どもでした。小学生の頃、なりたかったのは考古学者だったんです。エジプトのピラミッドや恐竜にすごく興味があったので、地球の昔のことを調べる職業が面白そうだなと思っていました。


──宇宙も、歴史を感じるものですよね。壮大で答えがないものを調べることに興味をお持ちだったのでしょうか。


そうかもしれないですね。自身が通っていた小学校や中学校の教育方針も影響していたと思います。「なんでだろう」と思ったことや、興味があることをとことん突き詰めることが自然と行われていたんです。


──荒井先生はキッズウィークエンドの授業中、子どもたちの質問をすごく大切にしてくださると感じます。この点も、ご自身が受けた教育の影響がありますか。


「質問することは決して悪いことではない」というのが、私が通っていた小学校の基本スタンスだったんです。人に対して何かを話すことを良しとするところで。それもあって、授業では「人前で話したり、手を挙げて発言することに価値がある」ということを毎回伝えています。


宇宙に興味をもったきっかけは「大きな望遠鏡」


──ピラミッドや恐竜から、星や宇宙に興味が向いたターニングポイントについてお聞かせください。

実は、私が宇宙や天文に興味を持ったのは、高校生以降なんですよ。日本で五本の指に入るぐらい大きな望遠鏡がある高校に入ったんです。ものづくりだけでなく機械も大好きだったので、その大きな望遠鏡を触ってみたいと思い、天文部に入りました。

高校時代は月に一度、地域の方に望遠鏡で星を見てもらうイベントを開催していました。そのとき、生まれて初めて土星を見た子どもやおばあさんが「本当にありがとうございました」と私に対して言ってくださって。感謝の言葉を届けてくださったのがすごくうれしかったし、望遠鏡で星を見ること自体、貴重な経験なんだと気付きました。それで、天文学者ではなく、「星を届ける」という活動に興味を持ったんだと思います。

──それ以来ずっと、星を届ける活動を続けていらっしゃるのですか。

自身が撮った星の写真や、作ったプラネタリウムを文化祭などで披露していましたね。天文部に技術指導で来てくださっていた先生から望遠鏡の仕組みを教わったり、望遠鏡のガラスを3日間磨き続ける研磨講習会に参加したりするうちに、望遠鏡やカメラを作る仕事に興味を持ち始めました。大学ではレンズの設計を勉強し、大学院卒業後レンズメーカーに就職。社会人になってからは、カメラの使い方や星の撮り方を高校生たちに伝えるボランティア活動をしていました。


荒井先生が大学生の頃に撮影した「ヘール・ホップ彗星」。当時はまだフィルム写真でした

「宇宙の仕事がしたい」という夢は実現しやすくなった


──荒井先生の授業に参加した子どもたちから「どうすれば宇宙関連の仕事に就けますか」という質問がよく出ます。先生の場合は、自分が興味を持った方向に進んだ結果、宇宙に関係する仕事につながったということですよね。

はい。今から10年ぐらい前だったら、体を鍛えながら勉強して「宇宙飛行士」になるしかなかったんですよ。でもこれからは「宇宙で仕事をしたい」という思いを持って、自分が一番得意なことを勉強し続ければ、夢はかなうと思います。

もし料理を作ることが大好きなら、料理作りを極めていけばいいんです。それで外食産業で働くことになったとして、そのときに宇宙の仕事にも興味を持ち続けていたら、会社の中で宇宙食の新規事業を提案できる。そんなことが5年、10年先には夢物語ではなくなるんです。現実問題として、“おいしい宇宙食”は必要なんですよ。

例えば飛行機の機内食。昔は戦闘機のパイロットが食べる非常食みたいなものしかなかったんです。なぜかというと、基本的に飛行機に乗る人は、戦争に行く人しかいなかったから。それが、高所得者の人たちがどんどん飛行機で海外旅行に行くようになり、おいしい食事が必要とされた。そのニーズに応えるために、機内食は進化し、レパートリーも増えていったんですよね。

宇宙旅行も同じです。最初は無重力を体験することが目的なので、そのためだったらチューブで出てくるような宇宙食でも我慢します。でも、何回か行くうちに無重力が当たり前になったら、「宇宙でおいしいご飯が食べたい」という声が出てくるはず。「おいしい宇宙食を提供する」という仕事が生まれるでしょう。

──確かにそうですね。今はそのような仕事はほとんどなくても、これから増えていきますよね。

その通りです。数十年先には、宇宙関連の花屋や弁護士の仕事だってあるかもしれない。だからどんな仕事でもいいんです。子どもたちには、自分の好きなことや興味のあることをどんどんやっていってほしい。それが途中で変わっても問題ありません。頭の片隅に「自分はやっぱり宇宙も好き」という気持ちがあれば、どんな仕事に就いても、宇宙に関連した仕事ができるようになりますから。

~インタビュー後編<一発必中は求めない。「失敗を怖れずに経験を積める場」が大事>はこちら

▶荒井先生の最新授業「オンラインプラネタリウム☆再び人類が訪れる月と月面開発」<10月8日(土)17:00-18:00、参加費:無料>の詳細・申し込みはこちら