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せきねみき

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インタビュー

2022.08.16 Tue

# 探究学習

『六法全書』で法律の面白さに開眼。その魅力をシェアしたい

『六法全書』で法律の面白さに開眼。その魅力をシェアしたい

キッズウィークエンドで長年にわたり、バラエティー豊かな授業の数々を展開してくださっている“やまそー先生”こと山崎聡一郎先生。幼少期のエピソードや今後かなえたい夢、親や子どもたちへのメッセージなどを伺いました。
聞き手:キッズウィークエンド株式会社 代表取締役 三浦 里江


山崎 聡一郎先生やまそー先生
教育研究者・写真家・俳優・合同会社Art&Arts社長。慶應義塾大学総合政策部卒業、一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。修士(社会学)。学部2年より「法教育を通じたいじめ問題解決」をテーマに研究活動を開始。発行部数60万部を超える『こども六法』(2020年度年間児童書売上ランキング1位)のほか、『こども六法すごろく』『こどもモヤモヤ解決ドリル』など著書多数

無理だと決めつけない。トライして得られた結果は財産

三浦:
やまそー先生は、教育研究家以外にも写真家や俳優など、さまざまな顔をお持ちですよね。キッズウィークエンドでも、法律の授業のほか、キャリアについてや音楽の授業なども行ってくださいました。そんな多彩なやまそー先生が、どのような幼少期を過ごされたのか、お聞きしてもよろしいでしょうか。

やまそー先生:
周りからやめておけと言われても、自分で試さないと納得できない性格の持ち主でしたね。トライした結果、やっぱり無理だったという経験もたくさんしました。でも、その中でいくつか「無理だと思ったけれど、意外といけるかも……!」というものもあって。無理だと決めつけずに挑戦することで、「無理だからやめておこう」というマインドではつかめなかった結果をたくさんストックできた。自身の財産です。

三浦:
人から言われて納得するのではなく、自分が思ったことは、何を言われてもまずやってみるタイプだったんですね。

やまそー先生:
はい。よく言えばチャレンジ精神旺盛、悪く言えば人の話を聞かない子どもです(笑)。興味の赴くまま、やりたいことに片っ端から手を出していたことが、今の仕事のスタイルにつながっているような気がします。

三浦:
まさに“これからの時代の働き方”を体現してくださっていますよね。そんなやまそー先生に憧れている方は、キッズウィークエンドの会員の中にもたくさんいらっしゃいます。

やまそー先生:
ありがとうございます。でも、ほんの4、5年前までは「結局何になりたいわけ?」「何がやりたいのか、よくわからない」などと言われて、まったく理解されなかったんですよ。ポジティブな評価をもらえるようになったのは、ここ最近のことです。

三浦:
法律を子どもたちに伝える活動をしているやまそー先生ですが、どのようなきっかけでこの活動を始められたのでしょうか。

やまそー先生:
根本的に法律が好きだし、面白いと思ったんです。例えば、法律の独特の言い回しや堅い書き方って、普段の生活では使わないものだらけですよね。そのギャップがたまらないな、と(笑)。「この面白さを自分だけのものにしておくのはもったいない」という気持ちが芽生えました。難しい法律をかみ砕いてみんなに教えたいというより、自分が好きだから、その好きなものをみんなとシェアしたいという思いが強いです。

三浦:
そうなんですね。やまそー先生とは長いお付き合いですが、このエピソードは初めてお聞きしたかもしれません。法律との出合いはいつ頃ですか?

やまそー先生:
中学校に進学して、『六法全書』を図書館で読んだときでした。中でも面白いなと思ったのは風俗営業法。風俗営業の定義、興味深いんですよね。

三浦:
確か、パチンコ屋さんも風俗営業に入るんでしたっけ?

やまそー先生:
はい。例えば、射幸心をあおるゲームをさせるとどうとか、客にダンスをさせるとどうとか、照度が一定以下の明るさだとどうとかっていう、どんなお店が風俗営業に該当するのかが細かく書いてあるんですが、その書きぶりが独特なんですよ。そういうところを面白いと思うような中学生でした。

三浦:
中学生で『六法全書』を手に取った方、初めてお会いしました(笑)。

やまそー先生:
めずらしいかもしれませんね。でも、僕が教えているこども六法スクールの生徒に「授業で使うから『ポケット六法』や『デイリー六法』など、大人向けのものを用意してね」と伝えたところ、『六法全書』を買ってきた小学生がいましたよ。

授業は遊びの延長! YouTubeのライブ配信に近い感覚

三浦:
キッズウィークエンドの授業ならではの特徴や、感じていることを教えていただけますか?

やまそー先生:
そもそも授業しているという感覚があまりないんですよね、キッズウィークエンドって。名前の通り“ウィークエンド”なので、みなさん休みの日に参加しているんですよね。

三浦:
はい、基本的にはそうです。

やまそー先生:
なので、キッズウィークエンドの授業は勉強ではなく、遊びの延長と捉えています。「何かを教えよう」という感覚で授業をしたことはないですね。「教えたいことをどういう風に見せたり聞かせたりしたら面白くなるか」。これを念頭に置いて毎回構成を練っています。

三浦:
学校での講義というより、イベント企画寄りですかね。

やまそー先生:
キッズウィークエンドの授業に参加する子どもたちは、ものすごくチャットを書き込みますよね。授業をしている僕としても、そのコメントを拾って発言するという双方向のやりとりがあるので、YouTubeのライブ配信と似たところがあるかもしれません。ライブ配信をしながら、聞き手のみなさんと学びをシェアしている感覚です。楽しんだ結果、自然と学びが身についていたらいいなと思っています。



三浦:
子どもたちに向けて発信するときに、意識していることはありますか。

やまそー先生:
僕の場合ないんですよ。わかりやすく説明するとか、簡単な言葉で説明するとか、あえてしないんですね。大人向けの授業と変わりません。

三浦:
そうなんですね。確かにやまそー先生の授業は内容も難しいし、ついていくのが大変かなと思うときもあるのですが、チャットを見ていると子どもたちが理解していることが伝わってきます。

やまそー先生:
授業中に、大人でも理解できないような専門用語だらけの条文を出すことはありません。でも、大人が理解できることは、子どもたちにも普通に言っていますね。

三浦:
先生が大人と子どもを区別しない理由が気になります。なぜでしょうか?

やまそー先生:
子ども扱いされたくないんじゃないかなと思って。授業で重要視している点も、わかりやすさより面白さだからです。カードゲームやアニメに出てくる難しい漢字や文章なんて、みんないくらでも読めるんですよ。『こども六法すごろく』のクイズのカードを作りながら子どもたちでテストプレーしたときも、難しい言葉でつまずく子はあまりいなかった。どこでつまずくかというと、「やさしい言葉を使っていても、ロジックが複雑な文章」なんです。僕の役割は、複雑な文章を区切って1つずつ説明すること。見せ方や伝え方を工夫することで、子どもたちがロジックを追えるようになり、理解できるようになりますから。

三浦:
ロジックが複雑だと、大人でもついていけない場合があると思います。特に子ども向けの授業では、シンプルに考えてもらうためのひと工夫が必要ですね。

人に何かを教える限り、知識のアップデートは必要不可欠

三浦:
やまそー先生って、小さい頃はどんな職業に就きたかったんですか?

やまそー先生:
ガソリンスタンドの店員とディズニーのキャストです。ガソリンスタンドは、単純にメカ好きだったから。ディズニーのキャストは、ディズニーが好きなのと、人前に立って何かをする仕事にすごく憧れていたから。数年後、時間に余裕ができたらキャストにチャレンジして夢をかなえたいと思っています。

三浦:
本当ですか? 先生がショーで踊る姿、見に行きたい!

やまそー先生:
希望はエンターテイナーではなく、アトラクションの運営やゲストの誘導担当です(笑)。

三浦:
ほかにかなえたい夢や、やってみたいことはありますか?

やまそー先生:
法律やいじめ問題の勉強をしたいですね。人に何かを教える仕事をする限り、自分の知識が教えられる側の知識より古いと、教える意味がない。知識は必ず古くなっていくので、常にアップデートしていかないといけません。今は時間がなかなか取れないのですが……。

三浦:
それでは、やまそー先生から私たち親世代へのメッセージをお願いできますでしょうか。

やまそー先生:
保護者の方に伝えたいことといえば、「自分の人生を楽しんでほしい」ですかね。

三浦:
深い一言ですね。

やまそー先生:
子どもを“親の作品”にしようとする家庭や、子どものために自分を犠牲にしている親御さんを見ていると、一体何のために子どもを育てているんだろうと思うことがあります。そもそも子どもは自分とは違う人間だというのが前提ですよね。なぜ自分の子が思うように育たないのかと悩むのは、本当にばかげた話。子ども本人は好きなように生きているだけなので、思い通りにコントロールするというのは、完全に的外れな発想なんですよ。

世の中には「自分の親みたいになりたい」と言う子どもも結構います。そういう子の親を見てみると、親自身が人生をエンジョイしているんです。人生の先輩として自分らしい人生を歩むことが、子どもに背中を見せていく上で大事なんだろうなと思います。

三浦:
親が楽しそうに自分の人生を生きていたら、子どもも「大人になるって楽しいことなんだ」って思えますよね。最後に子どもたちへのメッセージもお願いできますか。

やまそー先生:
言葉にするのは難しいですが、自分が持っているオリジナリティーをしっかり見つめながら成長してほしいと願っています。中には得意分野がないとか、人より優れているところがないと悩んでいる子もいると思いますが、決してそんなことはありません。この世の中、職業は星の数ほどあるわけで。しかもその職業の中で、求められる役割はさらに細分化されて存在しているのですから。1億人いたら、1億通りの仕事がある。それが今の大人の世界です。

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