
キッズウィークエンド
2025.01.15 Wed
【前編】幼魚は生き様の師匠。たくましさとかっこよさを伝えたい

「岸壁幼魚採集家」という一風変わった肩書で活動中の鈴木香里武(カリブ)先生。タモ網だけを使い、漁港の足元で稚魚や幼魚を探すカリブ先生に、“足元の海”で出会える生きものの魅力や、“永遠の大師匠”と慕う魚類学者・さかなクンから学んだことをお話しいただきました。
聞き手:キッズウィークエンド株式会社 アナウンサー 岩見 沙耶加
鈴木香里武先生
【幼魚水族館館長・岸壁幼魚採集家】
1992年3月3日生まれ、うお座。幼少期から魚に親しみ、専門家との交流や様々な体験を通して魚の知識を蓄える。
漁港に現れる稚・幼魚を観察する岸壁幼魚採集家。大学院で観賞魚の癒し効果と稚魚の生活史を研究。
メディア・イベント出演、執筆、資料提供等の発信活動をする傍ら、水族館のイベント・展示企画等、魚の見せ方に関するプロデュースも行う。
2022年7月に幼魚水族館をオープン、館長を務める。J-WAVE Podcast「Life of the SEA」ナビゲーター。著書多数。
幼魚の“生き様”のかっこよさに惹かれた
──現在さまざまな分野でご活躍中のカリブ先生ですが、具体的にはどのような活動をされているのでしょうか。
メインの活動は「岸壁幼魚採集」といって、タモ網を持って漁港に行き、海の足元にいる「幼魚」つまり“魚の赤ちゃん”をすくって観察するという、言ってみれば“壮大な金魚すくい”のようなことをしています。
両親は海が好きで、僕が生まれたばかりの頃から、休みになると僕を連れてよく海に行っていました。しかも、家族連れの多い海水浴場や磯ではなく漁港。そこでビニールシートに僕を寝かせておいて、近くの海で魚をすくい、持ち帰って育てていたそうです。
そんなところから人生が始まっていますから、生まれたときから家には水槽がありましたし、タモ網も物心ついた頃には既に持っていました。それから32年間、ずっと魚と共に生活しています。
──魚の中でも“幼魚”に目をつけた理由やきっかけはありますか?
両親の影響で、子どもの頃から魚を採集するのはいつも漁港でしたから、漁港で出会えるいちばん身近な魚が幼魚だったことがきっかけかもしれません。漁港は岸壁に囲まれているので、外から大きな成魚が入ってくることが少ないのです。
そして、その後ここまで幼魚にのめり込んだ理由は、幼魚の“生き様”がかっこいいから。大海原をこんな小さな体で生き抜いていくのは並大抵のことではありません。彼らは泳ぐ力もまだ弱く、敵に見つかれば逃げられずにすぐ食べられてしまう。そんな過酷な環境をどうして生き抜くことができるのかといえば、彼らが長い進化の中で、「生き残るためにはどうしたらいいか」を徹底的に考えてきたからです。
例えば、体の表面を“トゲトゲ”にしたり、毒を持ってみたり、枯れ葉そっくりに「擬態」したり。幼魚たちはそうやってさまざまな方法を編み出し、自らの身を守りながらたくましく生きています。そんな、小さな体に詰まった“壮大な生き様”がとてもかっこいいと思って、どんどんのめり込んでいきました。
彼らを見ていると、われわれ人間の背中を押してくれているように思える瞬間があります。人間もまた、社会の荒波に揉まれながら自分らしく生きようと必死にもがいているわけじゃないですか。僕には、彼らが人間にとっての“生き様の師匠”のように思えますね。
小さな生きものの姿や振る舞いに学ぶ
──われわれもまた“幼魚”である、ということですね。
もちろん、幼魚と人間とでは住む世界がまったく違いますし、魚類と哺乳類という違いもあります。それでも、広大な世界の中で生きる“ちっぽけな存在”という意味では同じですよね。
例えば海の中には、毒のある強い生きものに寄り添って生活する幼魚がいます。彼らは他の生きものに身を守ってもらえる反面、一歩間違えば自分も攻撃されてしまうかもしれないという危険と常に隣り合わせで生きている。そこから、われわれ人間も「他人に頼る勇気を持とう」というメッセージを感じ取ることができます。
責任感の強い人ほど、得てして他人に頼るのが苦手なものです。たくさんの仕事を抱え込んで効率が悪くなったり、挙げ句にはパンクしたりしてしまうこともあります。幼魚たちを見ていると「他人に頼るのも“勇気”なのだ」ということを教えられるのです。
また、先ほどお話ししたように、幼魚は泳ぐ力が弱いぶん、毒を持ったり、擬態したりと自分のできる工夫をして、それを武器にしながら生きているわけですね。そんな生き方を見ていると「自分の短所や弱点ばかりに目を向けてくよくよするのではなく、長所を伸ばしていけばいいんだよ」と、私たちの背中を押してくれているようにも感じます。
──2月に行なっていただく授業はどんな内容になりそうでしょうか?
今回は、私が運営している幼魚水族館から中継する形で授業を行なう予定です。館内にはその季節に目の前の漁港に棲息する生きものたちが展示されていますので、私自身がカメラを持って館内を回りながら「いま身近な海にはどんな生きものがいるのだろう?」ということをお話ししたいと思います。
具体的には、そもそも幼魚とはどのような存在なのかということに始まり、いまお話ししたような幼魚の魅力、彼らが進化の中で編み出した大海原を生きていくための戦略や技などをたくさんご紹介する予定です。みなさんがそれを聴きながらちょっと勇気づけられたり、海に幼魚を探しに行ってみようかなと思えたりするようなお話をお届けできればと思っています。
海の世界は、私たちが思うよりずっと身近なところにあります。船で沖に出たり、タイビングで深いところに潜ったりしなくても、漁港の足元にだって魚はたくさんいるのです。魚をもっと身近に感じて、魚の目を通して海の環境や生態系などに興味を持ってもらえたらうれしいですね。
──身近な幼魚たちの“生きる術”から、私たち自身の生き方についても考えることのできる授業になりそうですね。楽しみにしています。
<後編へ続く>
鈴木香里武先生の最新授業に参加しよう!(参加費無料)
幼魚水族館から生中継🐟海のいきものが生き抜くすごいヒミツ
2月16日(日)9:00-10:00、参加費:無料
詳細はこちらから:https://www.kidsweekend.jp/portal/events/4E60CB12
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幼魚水族館バックヤードツアー&カリブ先生とお話ししよう🐡
2月16日(日)10:15-11:00、参加費:3,000円
詳細はこちらから:https://www.kidsweekend.jp/portal/events/EDB0EF9A