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キッズウィークエンド

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インタビュー

2025.04.15 Tue

# 自己肯定感育成

夢は“科学のテーマパーク” 「学び+楽しさ」の可能性を追い求めて

夢は“科学のテーマパーク” 「学び+楽しさ」の可能性を追い求めて

科学オンラインスクールActBoonを運営しながら“サイエンスマジシャン(マジシャン科学講師)”として活躍中のシンディー先生。父親のマジックに憧れた子ども時代の思い出から、科学の未来に対する熱い想いまで、さまざまなお話を伺いました。

聞き手:キッズウィークエンド株式会社 アナウンサー 岩見 沙耶加


シンディー先生
【サイエンスマジシャン/ActBoon代表​】
科学を使って魔法を生み出すスーパー理系マジシャン♪ 株式会社構造計画研究所・株式会社ファーストリテイリングにて数理最適化エンジニアとして勤務後、一念発起して教育業界へ。現在はトヨタ自動車株式会社にてAIリサーチャー、ActBoon代表の二足草鞋。「科学」を様々な表現手法を用いて子どもたちにより楽しく学んでもらいたいという思いの元、ActBoonを発足、代表を務める。

「世界を旅するマジシャンになる!」進路面談で宣言

──「サイエンスマジシャン」というユニークな肩書でご活躍中のシンディー先生ですが、まずは現在の活動内容を教えてください。

「ゲームとマジックで科学が学べる」科学オンラインスクールActBoon(アクトブーン)を運営しており、ちょうど3年目を迎えたところです。また、企業のイベントや大学などでマジックショーをやったり、個人宅のパーティーに招かれてマジックを披露したりすることもあります。


──マジシャンになりたいという夢は子どもの頃から?

そうですね。マジック好きだった父の影響が大きかったと思います。父は幼稚園に私を迎えに来たときによく子どもたちにマジックを披露してくれて──とはいっても手の中にコインを隠しておいて耳から出す、といった簡単なものですが──それがいつもすごくウケて、園の人気者でした(笑)。それを見ていた私にも、きっと人を楽しませることに対する憧れみたいなものがあったのだと思います。

その後、本格的にハマったのは、中学時代にテレビでMr.マリックさんのマジックを観たのがきっかけです。高校の途中まで、大学に進学するつもりはまったくなく、進路面談で親と先生に「大学には行かず、マジックをやりながら世界中を旅します!」と宣言してしまうほど。いまから考えれば、地に足がついていないというか、一人で空想をどんどん膨らましてしまうようなタイプの子どもでしたね。

でもその反面、典型的な「熱しやすく冷めやすい」性格でもあり……中学で入ったバドミントン部も、高校時代に友人と立ち上げた将棋サークルも長続きはしませんでした。それでも、マジックへの興味だけは薄れることがなく、高校時代はマジックの専門書を探し求めて、いろいろな図書館を訪ね歩きました。


──一方で、科学にはいつ頃から興味を持ち始めたのでしょうか。

もともと数学とか物理とか、理系の科目は好きでしたし、学校の勉強も苦ではありませんでした。むしろ、ひとりでご飯を食べながら参考書を読んでニヤニヤしている、そんな子どもだったのです(笑)。

科学の道に進む直接のきっかけは、高校時代に図書館でたまたま見つけた『ご冗談でしょう、ファインマンさん』という自伝を読んだことです。著者はノーベル賞を受賞したアメリカの物理学者。世の中のあらゆる現象に興味を持っていて、たとえば「逆立ちしていてもおしっこは出るのか?」と疑問を持ったら、実際にやってみないと気がすまない(笑)。「俺もこういう人になりたい!」と、いわば“科学者的な生き方”に憧れ、高校時代の担任のすすめもあって東京工業大学に進学。化学を専攻しました。


ライバルは“エンタメ・コンテンツ”

──となると、大学進学後は念願だった“科学とマジック”に没頭する日々を?

それが、実際は化学の勉強や研究にあまり興味が抱けず、マジックを中心に生活していた……というのが正直なところです。今では勉強にももっと力を入れておけばよかったと少し後悔していますが(笑)。当時は、学内に自分で立ち上げたマジックサークルのほか、東京大学のマジックサークル「奇術愛好会」にも所属して、大学の授業を終えては東大に通う、という毎日でした。

それまで少人数向けの「テーブルマジック」しか経験のなかった私に、もっと大人数向けの「ステージマジック」を教えてくれたのも東大の人たちでした。いま私がやっているマジックショーのノウハウ、つまりものの見せ方や表情、振る舞いといったテクニックは、この時代に培ったものなんですよ。また当時は「ストリートマジック」にもハマっていて、自分のマジックの間口がどんどん広がっていったのもこの頃です。


──卒業後は、すぐにマジックに関わる仕事に就くことができたのですか?

いえ、卒業後は数理最適化(AIの一種)のシステム開発企業に勤めていました。でも「マジックがやりたい」という思いがどうしても消えず、2019年に探究型通信教育の「タンキュークエスト」を運営しているtanQ株式会社に入社しました。実は創業者の一人が小学校の同級生で、「一緒にやらないか」と声をかけてもらったのです。

ネットを見ればどんなマジックでもタネがわかってしまうような時代だからこそ、今後はマジック単独よりも、何か別の分野と組み合わせて見せることでマジック自体がより活きるのではないか──ちょうどそんなことを考えていた頃だったので、「教育」と「マジック」という組み合わせに可能性を感じたのです。授業で知識を伝えるのはもちろんですが、「マジック&教育」という新しい授業のあり方を探究する、という、なんだかアーティストのような毎日を過ごしていたと思います。いま考えると少々自分勝手だったな、と反省していますが……(苦笑)、この経験は今の仕事にも活きています。


マジックの話ばかりになってしまいましたが、もちろん科学教育への熱意もあります。大げさな言い方になりますが、この地球・宇宙の成り立ちや未解決の謎を理解したいという願望は、人間の本能に刻まれているものだと思うのです。老若男女みんなが新しい科学発見に心をときめかせている、というのが人間の本来の姿なのではないでしょうか。

でも、最近は科学に興味を持てなかったり、苦手意識を持ったりする子どもたちが多い。理由の一つは単純で、ほかに魅力的な娯楽があふれているからなのです。科学の教科書、実験教室、科学館、ポケモン……と娯楽が並んでいたら、思わずポケモンを選んでしまいませんか?(笑)

良質の娯楽が溢れている時代だからこそ、これからの科学には“エンターテイメント性”が求められる、そして科学のライバルは「ポケモン」や「ディズニーランド」「プロ野球」といったエンタメのコンテンツなのだと、私は考えています。



「大の大人が熱く語りたくなる」それだけの魅力が科学にはある

──最後に、授業で大切にしていることや今後の夢を教えてください。

授業で大切にしているのはエンタメ性と知識習得のバランスをとること。漫画・アニメ・ゲーム・マジックを組み合わせて“あっという間の60分”が体験でき、一方でしっかりと科学知識も習得できるように意識しています。このバランスは特に難しいですね。

実は私、今でも授業の前になるとめちゃくちゃ緊張するんですよ。子どもたちに楽しんでもらえるか、納得のいく伝え方ができるかと心配になって、開始30分前になってもネットや文献を調べ直したりして……今でもそうやって少しでもよい授業を届けようと、ぎりぎりの時間まで必死に粘り続けています。授業中、子どもたちに「一生懸命調べたけど、シンディーもここの仕組みはよく分からなかった……」と正直に伝えることもあります(笑)。


子どもたちは、科学のことをこんなに熱く、楽しそうに、そして悩みながら語るアラフォーのおじさんなんて見たことがないでしょうからきっと驚くはずです(笑)。でも、科学って大の大人がそんなに熱く語りたくなるものなんだ、それだけ価値のあるものなんだと感じてくれればいいな、と。カッコつけず、科学を探究してもがいている等身大の姿を子どもたちに見せる、そんな姿勢も大切にしています。

これからの夢は“科学のテーマパーク”を作ること。元素を学べるゾーン、光を使ったアトラクションなんかがあって、楽しく科学が学べる“リアルな場”を作ってみたい。いま各地にある「科学館」は、科学の門戸を広げていくという意味ではまだまだ真面目すぎるのかな……と感じます。「ポケモン」に負けないおもしろいコンテンツを「ディズニーランド」の規模で展開して、科学のファンをもっともっと増やしていきたいですね。



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『相手の心が読めちゃう?算数スゴ技マジックで2進法を学ぼう』
■4月20日(日)19:00-20:00 参加費:無料
■詳細はこちらhttps://www.kidsweekend.jp/portal/events/9967C1BA