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取材・レポート

2022.07.31 Sun

# 探究学習

「すごいものができる」と信じて作った、奇跡のタマネギ「スマイルボール」

「すごいものができる」と信じて作った、奇跡のタマネギ「スマイルボール」

キッズウィークエンドの子ども向けニュース番組「こども探究チャンネル」で、涙がでないタマネギ「スマイルボール」についてお話しいただいた“タマネギ博士”の正村様。タマネギ研究にまつわるエピソードや、次回(2022年10月予定)のこども探究チャンネル後編に向けた意気込みなどを伺いました。


ハウス食品グループ本社株式会社 アグリビジネス推進部 正村 典也様
聞き手:キッズウィークエンド株式会社 代表取締役 三浦 里江

「まず100回同じことができる人」こそ、研究者に向いている

三浦:
正村様には「こども探究チャンネル」の記念すべき初回「すごいぞ!辛くないタマネギ!誕生までのヒミツを探究」に登場いただき、大変お世話になりました。画期的なタマネギを開発された正村様ですが、そもそもどのような幼少期を過ごされたのか気になっておりまして。まずはそこからお話を伺えますでしょうか?

正村:
小学生の頃から、近所の田んぼでカエルやザリガニなどの生き物を捕まえては、ずっと触ったり観察したりしていました。図鑑を読むのも好きでしたね。大学で理学部生物学科動物学専攻に進んだのも、生き物のことをもっと勉強して詳しくなったら楽しいだろうな、という思いからでした。

三浦:
大学院卒業後、ハウス食品さんに入社されたんですよね。正村さんの研究者としてのキャリアはタマネギ一筋ですか?

正村:
もともとは研究所でスパイスや微生物の研究をしていたんです。会社の先輩方が「タマネギの涙目成分がどのようにしてできるか」をまとめた論文が、雑誌『Nature』に掲載されたのが2002年。涙目成分ができる仕組みを解明したんだから、涙がでないタマネギをつくるしかない!という話になり、2005年から涙がでないタマネギの開発を進めることになりました。すでにこの時点で、「涙がでないだけでなく、甘いタマネギになるだろう」というイメージはできていました。

三浦:
涙がでないタマネギ作りに成功するまで、開発は順調でしたか?

正村:
やはり時間はかかりましたね。方法を作るところから一つずつ始めて、チームみんながアイデアを出し合い、研究を進めた結果、7年目の2012年の秋に涙がでないタマネギができました。実は、2012年のシーズン前に「今年だめだったら、もうやめようか」と部下と話していたんですよ。

三浦:
諦めずに研究し続けた末に、見事誕生した“奇跡のタマネギ”ですね!

正村:
はい(笑)。毎日同じことの繰り返しは、しんどいときもあります。でも、涙のでないタマネギができるその場に自分が立ち会っていたとしたら、すごいことじゃないですか。それを想像したら、大変さよりもわくわく感が勝っていた毎日だったと思います。それと併せて、この研究を通して、実験科学では繰り返しの先にしか新しいことが見えてこないのだと感じました。ほんと、若い頃に気づいていたらと思います。なので、研究者に向いている人はどんな人かと聞かれたら、「結果を信じて、まず100回同じことができる人」と答えます。

三浦:
発想力に加えて胆力も必要。さまざまな力が試される仕事なんですね。

伝え方を工夫して、より多くの情報を持ち帰ってほしい

三浦:
話は変わりますが、「こども探究チャンネル」に登場された感想はいかがでしたか。

正村:
次回に向けて中身をもっと洗練しないといけない、というのが率直な思いです。伝え方ももっと工夫する必要がありますね。


三浦:
例えば、どのような点でしょうか。具体的にお聞かせいただけますか?

正村:
タマネギを切ったら涙がでるという説明が、子どもたちに伝わりにくかったのではと感じています。アニメーションなどのコンテンツを準備して、理解しやすくすれば、持ち帰っていただける情報がより多くなるのではないかと思います。また、自身が遠藤キャスターとの掛け合いに終始してしまっていた点も気になりました。子どもたちのチャット内容に少しでも反応できていたら……と反省しています。チャットを確認する担当者を1人増やし、スマートフォン以外のデバイスも用意しておくべきでしたね。

三浦:
実際、チャットには「涙がでないってすごい!」などの驚きのコメントがたくさん入っていたんですよ。確かに、子どもたちの映像やコメントを見ると、距離が縮まる感じがしますね。

「まるでりんごみたいなタマネギ」の食レポに注目

三浦:
次回はさらにブラッシュアップされた番組になりそうで、期待が高まります。10月の「こども探究チャンネル」後編の見どころについて教えていただけますでしょうか。

正村:
番組配信に先がけて、旬を迎えた「スマイルボール」の食レポをしてくれる子どもたちを募集する予定です。丸かじりしてもらった感想をリアルに話してもらえればと思っていますので、お楽しみに! 私もタマネギをガリガリかじりながら登場しているかもしれません。

三浦:
初回の番組内で試食した遠藤キャスターが「このタマネギ、まるでりんごみたい!」とコメントしていたのを聞いて、私自身「えっ、一体どういうこと?」となりました。この感覚を体験できる子どもたちは、ものすごくラッキーなんじゃないかと思います。

正村:
そうですね。前回の春とはまた違う、北海道のタマネギ畑の風景もお届けできればと考えています。みなさん、秋の番組を楽しみにしていてください!

▶キッズウィークエンド「こども探究チャンネル」YouTubeはこちら