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2026.09.13 Sun

# 共感力# 創意工夫# 集中力# リーダーシップ育成# 自己肯定感育成# 自制心# 探究学習

昆虫を見れば地球がわかる!? 昆虫ハンター・牧田習さんが世界で見たもの

昆虫を見れば地球がわかる!? 昆虫ハンター・牧田習さんが世界で見たもの



昆虫を見れば地球がわかる!?

昆虫ハンター・牧田習さんが世界で見たもの


昆虫ハンター、昆虫学者、タレントとして活動する牧田習さん。2025年に東京大学の博士課程を修了し、博士号を取得。昆虫と環境との関係や、昆虫の分類などを専門に研究しています。
2026年8月には、インドネシアとタイへ。前半はインドネシアのグヌンハリム・サラク国立公園で昆虫調査を行い、後半はタイ・プーケットで開催された国際学会「SAGE2026」に参加し、研究発表を行いました。
世界各地で昆虫を追い続けてきた牧田さんには、昆虫を通して、どんな「地球の今」が見えているのでしょうか。


コーカサスオオカブトも!昆虫の宝庫・マラサリ村へ

――インドネシアでは、どのような調査を
インドネシアのグヌンハリム・サラク国立公園内マラサリ村を訪れました。
公益社団法人「日本環境教育フォーラム」の皆さんのご協力のもと、公園内にあるマラサリ村で昆虫調査を行いました。
マラサリ村は、首都ジャカルタから車で5〜6時間ほどの場所にあります。
昼間は原生林や里山、お茶畑などを歩き、チョウやトンボなどを中心に昆虫を観察しました。夜は「ライトトラップ」という方法を使いました。昆虫の多くは明かりに集まる習性があるので、夜にライトを灯して、そこに集まってきた昆虫を観察する方法です。
森の中では、ほんの少し日当たりが変わるだけで別の昆虫が現れたり、少し移動するだけで環境が大きく変わったりしました。非常に豊かな昆虫相を見ることができました。
夜のライトトラップでは、コーカサスオオカブトやオウゴンオニクワガタの仲間なども確認できました。
ジャカルタから車で5〜6時間という比較的近い場所にもかかわらず、非常に高い昆虫の多様性が保たれていることに驚きました。



「町から昆虫が消えた」東南アジアで起きていること

――東南アジアでは、昆虫の減少も進んでいるのでしょうか。
僕は10年ほど前から東南アジア各地で昆虫調査をしていますが、非常に速いスピードで昆虫が減少していることを実感しています。
例えばマレーシアには、昔から昆虫やさまざまな生き物を観察する人にとって有名な場所があります。僕も初めて行った時は、多くの昆虫がいて驚きました。しかし年々、その数が減っています。昔は、夜に森の近くの明かりを探すだけで、セミやコガネムシ、カブトムシなど、さまざまな昆虫を見ることができました。ところが今では、町から昆虫が消えてしまったように感じる場所もあります。
原因には、宅地開発やリゾート開発、農地を作るための森林伐採などがあります。
また、販売目的で大量に昆虫を採集することも影響します。「昆虫は捕っても減らないのではないか」という意見もありますが、限度を超えて大量に採集されれば、一部の昆虫の個体数が大きく減ることもあります。
 

豊かな森の裏側で、今も続いていた昆虫の密猟

――今回の調査では、昆虫の密猟も確認されたそうですね。
今回訪れたマラサリ村は非常に昆虫が豊かな場所でした。乾季で、本来は昆虫が少なくなる時期にもかかわらず、毎晩多くの昆虫を見ることができました。
一方、「日本環境教育フォーラム」の方から、2000年頃にはこの村でもカブトムシやクワガタムシなどが大量に採集されていたという話を事前に聞いていました。
村の人が昆虫を売って、そのお金で日本車を買うことができた時代もあったそうです。インドネシアでは、許可なく昆虫を捕獲し、海外へ持ち出したり流通させたりすることは禁止されています。ところが今回の聞き取り調査で、現在もカブトムシなどの密猟が行われていることが分かりました。
現地の方によると、ここ7、8年ほどで、再び密猟が活発になっているそうです。
特に、コーカサスオオカブトのような格好良くて目立つ昆虫が狙われています。
1頭あたりの取引価格は、日本円にして1500円ほどです。村の一般的な方の月収が約3万円なので、1頭1500円というのは決して小さな金額ではありません。
時期によっては何十頭も捕れることがあるので、村の人にとって重要な収入源になってしまう場合があります。
――違法だと分かっていても、密猟をせざるを得ない背景があるのでしょうか。
あると思います。村の人たちも、それが良くないことだというのは分かっていると思いますし、森を大切にしている人も多いです。ただ、生活がとても厳しい。
例えば、中学校を卒業した後、高校の学費を稼ぐために、一度村を離れてジャカルタやシンガポールなどへ働きに出る人もいます。1年間働いてお金を貯め、そのお金で高校に通ったり、スマートフォンを買ったりする。それぐらい経済的に厳しい地域です。だからこそ、「違法だからやめればいい」というだけでは解決できない問題だと思います。


日本で売られる海外の昆虫。その向こう側には何がある?

――日本にいる私たちにも関係のある問題なのでしょうか。
僕自身、子どもの頃から疑問に思っていました。昆虫店やペットショップに行くと、海外の生きた昆虫がたくさん並んでいます。「なぜこんなに海外の昆虫が日本で売られているんだろう」と思っていました。
大学生になって海外で調査をするようになると、昆虫を海外から持ち帰ることがどれだけ難しいのかが分かりました。さまざまな許可が必要ですし、国によっては死んだ昆虫ですら標本として持ち出せないことがあります。まして生きた昆虫となると、さらにハードルが高い。もちろん、正式な許可を取って輸入されている昆虫もたくさんあります。ただ、「本当にすべてがそうなのだろうか」という疑問は、以前から持っていました。
今回の調査で、実際に密猟が行われていることを知り、「やはりこうした問題は存在するんだ」と感じました。
――今回の調査を通じて、日本の人たちに最も伝えたいことは何でしょうか。
日本の生活と海外の環境問題はつながっている、ということです。例えば、東南アジアで森林が農地に変えられている背景に、日本向けの商品が関係していることもあります。日本へ出荷する花などを育てるために、ジャングルが切り開かれることもあります。日本で当たり前のように売られている商品や昆虫の裏側で、森が失われたり、昆虫が減ったりしている場合があります。
さらに、その場所ではどのような経済的な事情があるのか。そこまで考えていくことで、地球はすべてつながっているということを実感できると思います。
昆虫も、ただ「格好いい」「かわいい」というだけの存在ではありません。
昆虫は環境の一部です。昆虫がいるということは、そこに植物があり、水や空気があり、その昆虫が生きられる環境があるということです。昆虫を観察することは、その場所の環境を知ることにもつながります。


昆虫を「捕る」から「見に行く」へ。森を守る新しい方法

――マラサリ村では、エコツーリズムの可能性も考えているのでしょうか。
はい。コーカサスオオカブトのような昆虫は、世界的に見ても非常に人気があります。特に子どもたちは、ゲームや図鑑などを通じて、海外の昆虫をよく知っています。ただ、そうした昆虫に自然の中で実際に会うのは簡単ではありません。
マラサリ村はジャカルタから車で5〜6時間ほどなので、比較的アクセスしやすい場所です。とはいえ、個人で行くのはかなり難しい。
NGOや村の方たちと協力し、きちんとした形で訪れることができれば、非常に学びの多い場所になると思います。
――エコツーリズムには、どのような価値があると思いますか。
現地に行くと、昆虫を見るだけではありません。山道を歩き、現地の方とコミュニケーションを取り、その土地の食事を食べる。そういった体験がたくさんあります。
その上で昆虫を見ると、「こういう森だから、この虫がいるんだ」「この虫はこういう植物と関係しているんだ」と、いろいろなものがつながって見えてきます。
昆虫と人間、そして環境とのつながりを感じやすい場所なんです。だからこそ、僕はこうした活動を今後も続けていきたいと思っています。

13歳で出会った一匹のチョウが、研究の原点に

――昆虫と環境の関係に興味を持ったきっかけは?
13歳の時、中学2年生の夏休みに沖縄で捕まえたチョウがきっかけの一つです。
そのチョウについて、周囲の方から「昔はこの辺にはいなかった」と聞きました。
昔は珍しかったチョウが、今ではたくさんいる。その時、「昆虫って、環境によって変わるんだ」と気づきました。もちろん、数が減ったり絶滅したりする昆虫もいます。一方で、気候が変わることで分布を広げる昆虫もいます。
「もっと長い時間で見たら、昆虫はどう変わっていくんだろう」
「昔はどうだったのか。将来はどうなるのか」
そこから、昆虫と環境の変化に興味を持つようになり、現在の研究につながりました。
――身近な昆虫にも変化は起きていますか。
起きています。例えば、僕が一番好きな昆虫はゲンゴロウです。
ゲンゴロウは田んぼやため池、沼など、水の中で暮らす昆虫です。しかし、農薬や外来種の影響などで数が減り、絶滅危惧種になっているものも多くあります。
一方で、温暖化などによって増えている昆虫もいます。その代表例の一つがツマグロヒョウモンです。オレンジ色のチョウで、今では東京都内でもよく見られます。以前は西日本や南日本を中心に分布していて、東京ではあまり見られませんでした。しかし気候変動によって分布が北へ広がりました。
さらに、ツマグロヒョウモンの幼虫が食べるパンジーなどのスミレの仲間を、人間が街や家庭で多く育てるようになったことも影響しています。昆虫の変化を見ていると、僕たちの暮らす環境がどう変わっているのかも見えてきます。


「好き」を昆虫だけの世界で終わらせたくない

――どんな昆虫に一番惹かれますか。
自分が今まで見てきた昆虫とは違う昆虫に出会った時に、すごくテンションが上がります。例えば、日本のセミはある程度大きいですよね。
でも、19歳ぐらいの時にニュージーランドへ行ったら、とても小さなセミがたくさんいました。日本の大きなセミを見慣れていたので、そのギャップがすごく面白かったんです。自分の中にある「昆虫ってこういうものだ」というイメージを裏切ってくれる虫に出会うと、すごく惹かれます。
――今後の目標は?
昆虫のすべての種類に出会ったり、すべての謎を解明したりするのは、僕の人生が何万年もないので難しいです(笑)。
ただ、自分が好きな昆虫を、昆虫だけの世界で終わらせたくはありません。
昆虫を入り口にして、環境や社会、人間の暮らしにつなげていきたいと思っています。
今回のエコツーリズムも、その一つです。
昆虫と植物、環境、人間社会など、いろいろなものとのつながりを大切にしながら、昆虫学者として社会に貢献できればと思っています。
――牧田さんにとって、昆虫の一番の魅力は何でしょうか。
やっぱり多様性です。現在見つかっているだけでも、昆虫は約100万種類います。
まだ名前が付いていないものまで含めれば、さらに多くの種類がいると考えられています。色も形も違いますし、同じ種類の昆虫でも、一匹一匹少しずつ違います。例えば同じ種類のチョウを並べても、模様が少し違います。
カブトムシでも、角の形が微妙に違います。一つとしてまったく同じものはない。
その個性や多様性が、昆虫の大きな魅力だと思います。
それに、昆虫はどこにでもいます。家のベランダから地球の裏側まで、山の上から水辺まで、春夏秋冬いつでも楽しめます。「どこでも、いつでも楽しめる」。それも昆虫の魅力ですね。


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